2013(平成25)年度の研究会

第4回研究会

 

開催概要

・日時:2014年 3月08日(土) 13:3016:20

・場所:エルアージュ(L-AGE)小石川 2F 集会室

    文京区小石川1-17-1 クイーンズ伊勢丹上

 
1部 【入門講座】 13:30~14:50
    「海外日本語教育経験を研究に」①(全4回)
     発表:吉田一彦 高嶋幸太 鶴岡聖未
  
発表要旨:
 海外で日本語教師として働いたことがある人の多くは、自分が見た物、経験したことについて何か「言いたいことがある」と思っているのではないかと思います。その心に秘めた<言いたいこと>について「絶対に正しい」という確信があり、個人的な経験として何にも替え難い価値があるとしても、他の人が行ったことがないところで、他の人が会ったこともない人たちがいっしょにいてこそ見聞できた物事について、他者にわかってもらうことは簡単ではない...。そんなことを1つ2つ取り上げて、他者にわかってもらえるものにしてみようか、みたいな発表です。人の話を面白がるのが得意な1人と、自分の<想い>がありすぎてそれに埋もれそうな2人の、合わせて3人の日本語教師が<想い>を論証すべき命題のかたちにして、他者を「なるほど、そうですね」と納得させることを試みます。論文執筆を第一にキャリアのための点数稼ぎとか、かっこいいことだと考えている人、どうか来ないでください。<想い>が募っている人は大歓迎。実験であって、人を教え諭せるような有り難いものではありませんが。(一昨年に行った「方法論実習」に続く入門講座第2弾です。第1弾とはちょうど逆の方向で思考することになります。)
 
2部 【実践報告】カンボジア 15:00~16:20
    「海外の地方都市における日本語教育の現状と課題
     ―カンボジアにおける事例から―」
     発表:渡辺藍
     司会:小林基起
 
発表要旨:
 カンボジアの地方都市シソポンにおける事例から、海外の地方都市における日本語教育の現状や教師が抱える悩みについて考える。
現在のカンボジアは、経済成長が著しく、日系企業の進出や投資も目立つようになってきている。日本語が話せる人材を探す企業は増え、一時期停滞していた日本語学習熱も回復の兆しを見せている。また、世界遺産アンコールワットを有する都市でも、日本語のガイドになりたいと考える日本語学習者は多い。一方で、日本人との接触経験の少ない地方都市ではそのような明確な目的ではなく、日本語を勉強する学習者も数多く存在する。
本発表では、地方都市の日本語学習者の姿や課題、教師のジレンマなどについて触れる。
発表時使用スライド(1部【入門講座】)
入門講座1.pdf
PDFファイル 1.6 MB

※1部の発表はYouTubeの▼こちらのチャンネルからご覧になれます。

第3回研究会

【開催概要】
・日時:2013年12月14日(土) 13:30~16:40
・場所:エルアージュ(L-AGE)小石川 2F 集会...
    文京区小石川1-17-1 クイーンズ伊勢丹上

1部 【実践報告】 13:30~14:30
   「日本語非母語話者教師支援の問題点の所在につい
    ~インドネシア、北スラウェシ州における調査からの報告~」
    発表者:太原徹雄
    コメンテーター:吉田曜子
    司会:佐久間勝彦

第1部 発表要旨:
 H24年度第4回海外日本語教育研究会にあける工藤聖子氏の発表に引き続き、インドネシア北スラウェシ州の日本語教育について取り上げたい。第二次世界大戦後、インドネシアでの日本語教育において初期段階より開始された地域の一つである同地域は国際交流基金と青年海外協力隊、双方による支援を長年受けていた地域である。2012年の協力隊の同地域への派遣終了により、現地駐在型の日本語教育支援は途絶えている。今回、報告者は教育実践型改善のための教員資質をビリーフの視点から探るべく調査を行った。協力隊配属先であった高等教育機関と国際交流基金の支援先であった中等教育機関に足を運び、派遣終了後の教育現場や現地の教師について実際に見聞きした現状を報告するとともに、これら見聞きした現地の教員が抱える問題点の所在とその支援方法について考察したい。

 

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【発表後記】

 インドネシア北スラウェシ州の日本語教育事情について、前半部では、日本からの支援が終了した地域のその後を、具体的な事例を提示し、参加者の皆さんと情報を共有しました。

 その上で3つの問題提起をいたしました。

1)JICAボランティア隊員やJF派遣専門家が蒔いた種が芽吹いた事例、枯れてしまった事例を提示し、今までの支援のどこに問題があったのか。

2) 中等教育における第二外国語が必修でなくなった今、海外において、実用言語としてではない日本語を学ぶことの意義。

3)遠隔地の教員に対してインターネットを用いた研修やネットワーク構築が広がっている。世界的に見れば、実績のある地域も散見されるが、(インドネシアの)地方部においては未だ情報弱者がいて、上方格差があること。

 既に同様の先行研究・報告も見られますが、JICAやJFの支援があってもなお残る問題を現地に行って確認させられました。

 後半部では、枯れてしまった(支援したことがうまく機能していない)という問題点を分析するにあたって従来とは異なる、新たな視点を提案しましたが、発表時間が十分でありませんでした。詳細については機会を改めたいと思います。

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2部 【特別企画】 14:40~16:40
   「学会誌創刊に向けて
    ~執筆者による発表と意見交換~」
    発表者とそれぞれの論文の仮題:
       佐久間勝彦 『海外日本語教育研究の課題
       小林基起  『海外日本語教育の歴史的使命』
       吉田一彦  『基礎科学としての海外日本語教育学に向けて』
    司会:吉田一彦(学会誌編集長)

第2部 発表要旨
(Sakuma).pdf [144.1 KB] http://goo.gl/SxGJF6
(kobayashi).pdf [193.7 KB] http://goo.gl/yy0z0C
(yoshida).pdf [182.0 KB] http://goo.gl/Y8hUrA

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【発表後記】基礎科学としての海外日本語教育学確立に向けて  吉田一彦

 何としても今年から活動を本格化させたいこの学会の研究会の場で、あるいは、近々発行される学会誌の場で、海外で活躍中の日本語教師や元日本語教師が、自分の経験を自然体で振り返り、まっとうに物事を考え、得難い経験の一部でも共有することを許してくれることを願いつつ、話をしました。基礎科学として海外の日本語教育を研究することは、こうしたことを実現するためのアプローチの1つでしかありません。繰り返し強調しますけど、他のやり方はいくらでもあります。フィードバックでうれしかったことと、不可解だったことと、1つずつあります。うれしかったのは、「自分の思い付きを研究にしていっていいんだということに気付かされた」ということ。やり遂げて心から「良かった」と思える研究のほとんどは、そんな出発点があってこそだと言えるでしょう。不可解だったのは、「発表の中に理解できないことがあった」という指摘。学会に話を聞きにいけば、聞いた話に理解できないことが混ざっていて普通ではないでしょうか?学会で聞いたことが全部わかったというのは、よほど例外的に博学な人の場合か極端にトピックを限定した特別の大会のような場合にしか起こらない気がしますけど。発表に使用したスライドがほしいという意見もありましたので、ここでダウンロードできるようにしました。↓

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yoshida_slides.ppsx
Microsoft Power Point プレゼンテーション 1.1 MB

「臨時研究会」

【開催概要】
・日時:2013年10月19日(土)13:30-16:30
・場所:エルアージュ小石川 2階 集会室 (東京都文京区)

「中東の日本語教育の現状と課題 ~教師間ネットワーク形成を中心に~」
1部 【実践報告】 発表者:村上吉文
2部 【グループディスカッション型勉強会】
   ファシリテーター:村上吉文

 

第2回研究会

【開催概要】

・日時:2013年8月31日(土) 13:0016:45

・場所:エルアージュ(L-AGE)小石川 2F 集会室

    文京区小石川1-17-1 クイーンズ伊勢丹上

 

・内容:

今回は、1部国別事情報告、2部はワークショップを行いました。

 

1】「アフリカ特集

 ~ケニアとスーダンの事例からサブサハラの日本語教育を考える~

  ”サブサハラの日本語教育に求められることとは?”」

13:00~15:00

・発表者:蟻末淳(元国際交流基金日本語教育専門家・ケニア)

     鶴岡聖未(元青年海外協力隊短期・スーダン)

・内容:サブサハラのうち広い範囲の東部アフリカでは、ケニア、マダガスカル、エチオピア、タンザニアで日本語が教えられている。今回の発表では、これに上記地域の近隣国であるスーダン、並びに昨年まで日本語が教えられていたウガンダの教育事情を踏まえ、サブサハラ・アフリカの日本語教育を考えて行きたいと思っている。
上記の六か国の日本語教育実施国は大きく二つに分けられる。一つはケニア・マダガスカルという「サブサハラ日本語教育先進国」、そして、日本語教育機関が一つである「サブサハラ日本語教育発展途上国」である。
 前者の特徴として、日本語教育の歴史が約40年と長いこと、日本語学習者が1500名から2000名を数えること、現地ノンネイティブ教員が多数を占めること、である。一方後者の特徴としては、学習機関が1校であり、教員のほとんどがJICA等から日本から派遣された日本人であること、が挙げられる。 2012年から、ナイロビにて、ケニア日本語教育会議、東アフリカ日本語教育会議と、日本語関係の学会が二年続けて行われ、ばらばらに行われてきた東アフリカ各国間の日本語教育のネットワークができてきた。
 ケニアでの実際の業務に加え、それらの会議やそれに先立って行われた東アフリカ日本語教育調査出張から、蟻末は特に、「サブサフラ日本語教育先進国」の現状と課題を中心に話し、「サブサハラ日本語教育発展途上国」の現状と課題を含めた今後の議論の出発点としたい。鶴岡は、スーダンの現状と課題を報告し、「サブサハラ日本語教育途上国」の今後についての一考を、以前赴任したタンザニア・セネガルでの経験を含めてお話しする。現地のラブコールが日本側に理解されにくい実態や、日本語ファンをつなげる的確なファシリテーションの重要性などに触れながら、いわゆる「サブサハラ日本語教育途上国」とされる国々の日本語教育に今何が求められているのか、皆様とともに考える場としたい。
 

 

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【発表後記】

 発表者の元国際交流基金日本語専門家、ケニア派遣の蟻末です。日本での発表には慣れていないので、会場一杯の皆さんの食い入るような視線、少し怖かったのですが(笑)、皆さんがアフリカの日本語教育に興味があることが伝わってきました。

 今回中心にお話ししたケニア、マダガスカルは、サブサハラアフリカでも、学習者の数が多いことは勿論、現地ノンネイティブ教員が多いことが他の国とは違った特徴です。こういった国では、学習者に対する教室での授業に加え、現地教員への教授法指導・コーディネート、近隣諸国も含めたネットワーク作りなども日本語教師の大きな役割になります。

 そのためにはインターネット等のネットワーク形成のためのインフラの知識や、国際会議の開催などの活動、在外公館への働きかけなどのアドボカシー活動、コラボレーションが重要です。中々大変な仕事ですが、このような広範囲の活動が必要とされることが、サブサハラアフリカのような「辺境」で日本語教育に携わる楽しみだと思います。これまでは、日本や欧米の先進国から学ぶことが主眼でしたが、今後は様々な経験、事例、その発信を通じて、日本語教育の潮流に絡んでいくことが期待されています。

 今回は私達の発表の時間が長かったこともあり、討論の時間が取れませんでしたが、様々な国(しかも「辺境」が多い)での日本語教育経験者が集まっている利点を活かし、忌憚なく話し合うことができれば素晴らしいと思います。

 私は海外日本語教育研究会には初めての参加でしたが、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

 


 「スーダンの日本語学習事情と、今後についての一考」と題し、赴任国スーダン(20126月~20136月)での活動を紹介し、スーダンでの課題、並びに「サブサハラ日本語教育途上国」に対しての考えをお話した鶴岡です。私は①高等教育機関での日本語教育の意義再考②赴任国の土壌に合ったアプローチ③“日本語教育支援学”の確立④「学習者の実益」と「カウンターパートの育成」以外の新しい座標軸の打ち立て、以上4つの観点に注目し、今までこの地域の日本語教育に携わってきました。今後もそれらを研究材料として深めていき、裏づけのある現場からの記録として残し、発信していけたらと思っています。

 学習意欲に満ち実にいきいきと日本語を学習しているスーダン人たち、私は今回、彼らのとびっきりの笑顔に支えられながら、そして、いわゆる「実益」に直結しない日本語学習のあり方や意義について模索していくことへの情熱を再確認しながら、発表しました。

 今回スーダンでの活動でキーワードとなった日本・日本語ネットワーク構築について、各国の状況などをこちらから参加者にお聞きしたかったのですが、これに関してはまたの機会を待つことにします。


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2】「海外の非母語話者日本語教師のグループプロファイルを作成してみよう vol.1.2」

15:15~16:45

・ファシリテーター:小松知子、三原龍志

・内容:最初に、前回参加しなかった人のために、前回の内容を簡単におさらいします(できたら前回のPPTを見ておいてください。)そして前回のWSの成果物である海外の日本語を母語としない日本語教師(以下、NNT)に必要となる言語(日本語)使用場面、活動の記述の共有化をCEFRを参照に試みます。最後にその「海外のNNTのグループプロファイル」の活用法をみんなで考えてみたいと思います。

資料

自己評価表 http://yahoo.jp/box/Dckz_k

レベル別特徴(産出)http://yahoo.jp/box/Dg-W0p

レベル別特徴(受容)http://yahoo.jp/box/gXSqrV

レベル別特徴(やりとり)http://yahoo.jp/box/PGM_kk

JF日本語教育スタンダード http://jfstandard.jp

  

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背景:

 ファシリテーターの2名は、これまで海外の複数国で日本語教育に従事し、非母語話者日本語教師(以下、NNT)と共に働き、NNT対象の研修に携わってきた。海外の日本語教育の現場では、セミナーや勉強会、弁論大会など多くの行事で日本語が使われている。また、さまざまな立場の母語話者日本語教師(以下、NT)との業務上、生活上の相互支援や日本からの来客への対応など、NNTが日本語を使用する場面は、教科書や教室の中に限られているわけではない。では、どんな場面で日本語によるどんな言語活動があるのか、それを明らかにしてみようと考えたのがこのワークショップ(以下、WS)の背景である。

 

目標:

・NNTの日本語使用について考え、カウンターパートであるNTの役割について理解を深めることができる

・グループプロファイル作成の方法を経験することができる

・成果物として海外NNTに必よとなる言語使用場面、活動をまとめることができる

 

成果(2回目):

 今回のワークショップの目標の上記3点のうち、1と2は、ほぼ達成され、3の目標である成果物の完成は、その一部が達成された。2回目のみの参加者に前回の発表資料を予め見て参加してもらったことで、ある程度スムーズに進めることができたと思われる。作業後のディスカッションでは、グループプロファイルの活用法、意義に関し、「NTとNNTの業務分担について考える材料になる」NNTの研修をデザインする際の参考になる」「NNTの日本語についてNNTといっしょに考える参考になる」などの意見が出された。また、アンケートには、「NNTとの関係づくりを考え直す機会となった」「さまざまな視点や新しい視点を学ぶことができた」「CEFRに対する理解が深まり、利用法について考えることができた」など肯定的なコメントが多く占め、今回の限られた時間内でできる限りの目標が達成されたと思われる。

 

課題(2回目):前回の参加者19名中、今回も参加したのは7名、今回初めての参加者は27名で、多くの人が1回目を踏まえて2回目に進められなかったことが残念であった。また、最後にディスカッションを深める十分な時間を取ることもできなかった。ワークショップのよさは、作業や話し合いの中から参加者自身が気づき、学び合う点にあり、成果物を前に振り返る時間も重要となるため、ワークショップごとに必要な時間が確保されることが望まれる。

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第1回研究会

【開催概要】

・日時:201368日(土) 13:0016:00

・場所:エルアージュ(L-AGE)小石川 2F 集会室

    文京区小石川1-17-1 クイーンズ伊勢丹上

 

・内容:

今回は、1部はワークショップ、2部は国別事情報告を行いました。Ustreamの録画は第2部のみです。

 

1】 「海外の非母語話者日本語教師のグループプロファイルを作成してみよう」 

・ファシリテーター:小松知子、三原龍志

・内容:海外の日本語を母語としない日本語教師(以下、NNT)をサポートしたり、NNTを対象とした日本語研修をデザインしたりする際の参考とするため、NNTグループプロファイルを作成するワークショップです。2回シリーズで行う予定ですが、第1回を行いました。このグループプロファイルとは、特定の目的集団に必要となる言語使用場面・活動をまとめたもののことです。言語使用者、学習者を社会の一構成員とみなす行動中心の考え方に基づき、言語使用コンテクストを重視しています。

 

資料

 (1) 発表資料 http://goo.gl/KWq0j

 (2) グループ別言語活動の記録  http://goo.gl/8K2Yr

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背景:

 ファシリテーターの2名は、これまで海外の複数国で日本語教育に従事し、非母語話者日本語教師(以下、NNT)と共に働き、NNT対象の研修に携わってきた。海外の日本語教育の現場では、セミナーや勉強会、弁論大会など多くの行事で日本語が使われている。また、さまざまな立場の母語話者日本語教師(以下、NT)との業務上、生活上の相互支援や日本からの来客への対応など、NNTが日本語を使用する場面は、教科書や教室の中に限られているわけではない。では、どんな場面で日本語によるどんな言語活動があるのか、それを明らかにしてみようと考えたのがこのワークショップ(以下、WS)の背景である。

目標:

・NNTの日本語使用について考え、カウンターパートであるNTの役割について理解を深めることができる

・グループプロファイル作成の方法を経験することができる

・成果物として海外NNTに必要となる言語使用場面、活動をまとめることができる

成果(1回目):

 バラエティーに富んだ地域での経験者が集まり、グループごとに活発な話し合いが行われた。アンケート結果では、グループプロファイル作成という活動に対する肯定的な記述が多く見られた。またWSの成果物として、参加者からNNTのさまざまな日本語使用場面と120の具体的な日本語使用活動例を得ることができた。

課題(1回目):

 このWSは、2回シリーズで、2回目が3か月後と間が空いているため、1回目のみの参加者が多くなりそうである。今回1回目だけの参加者にとっては、グループプロファイリングの途中までしか経験できず、また、2回目に予定している議論や振り返りが経験できないことが残念である。

次回予告:

 今回挙げられた日本語使用場面と活動を「ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)」の能力記述文(Can-do)に照らし合わせ、記述を再検討しつつ、必要に応じて追加して、海外のNNTのグループプロファイルを完成させる。そして、成果物と作成の過程を振り返り、ディスカッションする予定である。

※2回目からの参加も可能。歓迎します。ただし、1回目の資料を読んだ上で参加いただくことを期待します。

 

2】 「外国語を学び始める理由・学び続ける理由・使用する理由再考-多言語社会ダカール(セネガル)の外国語学習者聞きとり調査から」

・発表者:吉田一彦

・内容:ダカールは、これまでのボランティア教師等の大変な尽力にもかかわらず、日本語教育が根付かないところの1つだ、と言われてきました。そして、それは日本語のニーズが見出せない社会だから、という説明がありました。しかし、多言語使用者と親しく付き合ってきた経験から事はそんなに単純ではないのではないかという疑問が湧いてきます。「学び」や「コミュニケーション」といった基本概念すら、誰にとっても一様のものだという保証はありません。こうした疑問の一角に光を当てるベく行ってきたISM(高等教育学院)での教師・一般学生の聞き取り調査から、話題提供し、言語(教育)政策論からは距離を置いた研究の可能性を探りたいと思います。

 

・資料:

 (1)発表資料 http://goo.gl/dx5T9

  (2)発表内容について ▼以下  (PDFでもご覧いただけます

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 外国語を学び始め・学び続け・使用する理由について、ダカール(セネガル共和国)にて、2008年から日本語を教え始めたが現在は諸事情のため休止している高等経営学院アジアアフリカセンターにて教師と学生を対象にして行った聞き取り調査で得た情報をもとに考えたことを話しました。セネガルの教育機関というと、きっと学生はセネガル人だろうと想像するかもしれませんが、ここに学ぶ学生のうちセネガル人は六割のみで、あとの四割はフランス語圏のアフリカ諸国を中心とした他の国からの留学生たちで、40もの国籍を数えます。教育は人が相手であるから〈教えるものは何であれその方法を論じる教育学においては、学習者の人としての特性に(少なくとも人類学がこれまでやってきた程度には幅広く、そして、できれば深く)関心を持つ必要がある〉という当たり前のことをあらためて考えさせられました。現状でさかんに行われている、外国語教育学におけるニーズ分析や、教師教育における教師としての成長のモデルや、フォーマル教育である学校という枠内に展開する語学教育というようなスコープではとうてい捉えきれない重要な事実が、ここセネガルの言語教育・言語使用にはあると確信しました。

 調査で得られた情報のなかでも、日本留学によって学位取得した経験がある所長のジャネ氏のコメントの、この地の人ならでは(あるいは、彼自身の言葉を借りるなら、アフリカならでは)の事情があり、それに配慮した教育の方法を考えるべきだ、という考えに説得力があるし、そう考えてみることで研究の可能性もさまざまに見えてきています。事情は次の3点に要約できます。1)アジアの国々と、そのどの国とは言わず、距離を縮めることが、これまで疎遠であったアフリカには重要な課題だということ(それに加えて、ここでアジアの国が交流を実現するならば、セネガルと同時に多くのアフリカの国との交流が実現すること)2)アフリカ経験があり、日本文化をよく知り伝えることのできる日本語母語話者教師を4年ほどの一定期間常住させ、自立して活動できるセネガル人教師が育つことをサポートし、今後のアフリカを担う世代に日本のことを伝えてほしいこと(それが日本がアフリカに影響力を持つということだということ)3)アフリカ人にはアフリカ人の言語を話す文化・語る文化があり、それが言語使用の最大の特徴だということ ジャネ氏自身のコメントにも、(今回の発表では十分には取り上げることができませんでしたが、)学生の自分自身の言語学習・使用経験にも、日本語は学んで日本人と話すためのものという意識がはっきり表れていました。

 以上をもとに、この地の日本語教育について、〈週に4時間3年間のサイズで、アフリカ人向けの話し言葉中心のカリキュラムを開発すべきである。そして、アフリカ人の優れた口頭表現力や、コードスイッチング力が活かされる教育をするべきである〉という提言を行いました。

 そのほか、純粋に言語研究のために、ジャネ氏が生まれ育った同国東部のような多言語話者混住地域をいつか訪ね、多言語話者として育つ過程をフィールドワークしてみようと思いました。アフリカ人のコミュニケーションのスタイルについて深く知れることはもちろん、彼らのコードスイッチングや書き言葉に依存せずに確かな記憶を保つ妙から、外国語の上級学習者や長期にわたる使用者が学んで役立てられることが、たくさんあるように思えるのです。

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